笑う人

2002年2月26日
彼はいつも笑っていた。
糸のような細い眼で、常に笑顔を絶やさなかった。

何をされても怒る事無く、
「アハハハハ」って笑ってた。

あまり笑う事の無かった自分には、
なんでそんなに笑えるのか理解できず、
マジメな話をしている時も笑っている彼の態度を、
不謹慎に感じたりしていた。

とにかく真剣な顔というのを見た事が無くて、
常にヘラヘラしてる、そんなような人だった。


ある日、話してるといつもと違った風だったので、
気になって聞いてみた。

「ああ・・・おばぁちゃんがね。昨日亡くなったんだ。」
「良くお小遣いくれて、可愛い可愛いって可愛がってくれてたんだ。」
「アハハハハハ」

そんな話をしながらも、彼はずっと笑っていて、
祖母が死んで、なんで笑えるのか。不謹慎で非常識だと、不愉快な気分になった。

「アハハハハ」

まだ、笑ってて気分が悪くなってきた。

「アハ・・・アハハハハ・・・」

でも、ふと横を見たら違った。


彼は泣きながら、笑っていた。

「・・・いつも笑ってたから、笑う事しか出来ないんだ。」
「・・・こういう時、きっと普通は哀しい顔するんだろうね。」
「皆、笑ってる方が良いって言ったから、
いつも笑ってるようにしてた。笑いたくなくても笑ってた。」

「・・・そしたら・・・
笑う事以外できなくなった・・・」

「アハハハハハハ・・・」

そう言って、笑い続ける彼の眼からは、
大粒の涙がポロリポロリと落ち続けてた。

笑うという行為で、
全ての感情を押し殺して来た彼は、
笑うということでしか、感情を表せなかったのかもしれない。


でも・・・
泣きながら笑う彼の姿は、
どこまでも哀しくて。
なまじ哀しい顔をするよりも、もっと哀しげだった。


彼は今。
どこでどうしてるのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
作り話♪

えへ♪

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